音楽療法博士課程は、アジアの学生とテンプル大学米国フィラデルフィア本校を直接結ぶ遠隔学習プログラムとして、この春学期に正式開講しました。4月25日から5月1日には、東京・港区のテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)で初めて年次集中コースが実施され、これらのコースに6名の博士課程学生を迎えました。集中コースでは3つのコースで、音楽療法の定量的研究や医療音楽療法、博士課程セミナーの領域が取り扱われました。
音楽療法博士課程プログラム・ディレクターであり、今回の講義のために米国フィラデルフィア本校から来日した担当教授シェリル・ディレオは、次のように話しています。「アジアでは社会における音楽療法士のニーズが高まっており、そのニーズに応える専門家の養成の可能性を探るうえでも、米国の大学としてアジアで初となる英語での音楽療法の博士課程を、ここTUJで提供できるのは素晴らしいことです」。現在、日本音楽療法学会(JMTA)は全国に約5,500名の会員を持ち、今後アジア全体でさらに多くの音楽療法士が博士課程レベルの学問やこの領域の研究を必要とするようになると、ディレオは予測しています。
参加した学生の一人、Evelyn Leeさんはシンガポールの病院で音楽療法士として働いています。「この集中プログラムに参加でき、とても嬉しいです。アジアに広がる仲間を持つことは素晴らしいと思います。また、アジアに特化した共通のアプローチを共有できるので、仲間と集まることは非常に有意義です。 修士課程で通った大学では、クラスでアジア人は私ひとりだけでした。このTUJのプログラムは、文化的に私により適しています」と Leeさんは話しています。
台湾のホスピスで働く Fu-Nien Hsiehさんは、講座の数週間前にこのプログラムのことを知り、すぐに申し込んだそうです。Hsiehさんは「自宅からほんの数時間、飛行機に乗ってこられる距離で、大変便利でした。私は米国で専門教育を受けた後、長年この仕事をしてきました。仕事を辞めずに、家族とそれほど離れずに受講できるので、東京でのこのコースを満喫することができました」と感想を語りました。
日本国内から参加し、名古屋の大学で音楽療法を教える猪狩裕史さんは次のようにコメントしています。「ディレオ教授を迎えることができ、私たちは大変恵まれていると思います。教授は、ボイヤー(テンプル大学音楽・ダンス学部)で多くのアジア人学生を教えた経験を持ち、頻繁に世界各国を訪れているため、アジア人の考え方をよく理解しています。私はフィラデルフィア近郊の大学で修士課程を修了しましたが、博士課程ではテンプル大学に行きたいとずっと思っていました。 日本を離れることなく職場から近い場所で私の理想の大学に入学でき、非常に嬉しく思っています」。
音楽療法とは
音楽療法は、セラピストが音楽の様々な側面を使用して患者の感情的、社会的、身体的、認知的、精神的な健康状態を向上または維持することを支援する、対人関係プロセスです。臨床応用では、音楽を通じて直接患者のニーズに応えることもあれば、患者とセラピスト、またはグループでの患者同士の関係性を通して患者のニーズに応えることもあります。音楽療法士は様々な環境に活躍の場を広げており、例えば、総合病院、精神医療施設、学校、刑務所、リハビリテーション・センター、老人施設、ホスピス・プログラム、訓練機関、民間医療機関、大学などがあります。応用音楽、理論、歴史、心理、音楽療法および関連する臨床分野のコースでは、音楽の才能や自己理解と対人関係スキルの重要性が強調されています。
この学位は、テンプル大学音楽・ダンス学部(Boyer College)により2000年から授与されている、米国で初めて提供される唯一の真の音楽療法の博士号です。このプログラムは、アジアの音楽療法士にとって、キャリアを継続しながらこの分野でのさらなる教育と高度な訓練と研究を得る、貴重な機会を提供します。