テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)では日本語を母語としない学生のために日本語専攻プログラムを提供しています。本プログラムは、日本語スキル、日本関連科目、そして一般教養の3つのコースから構成されています。TUJの日本語学科では、学生が日本の文化の中で仕事と生活をするために必要となる言語的および社会的スキルを身につけることを目的としています。日本市場をターゲットとしている多国籍企業や、日本に長期滞在して地域社会に貢献したいと考えている学生にとっては最適な学科といえるでしょう。

生きた日本語を

TUJの日本語学科は日本語の知識が全くない学生でも受講することが可能です。カリキュラムはこれまで全く日本語を学んだことがなかった学生でも、また、すでにある程度の日本語の知識を持った学生にも高いレベルの日本語を習得できるように設計されています。口述と筆記によるクラス分けテストによって、学生は自分に合ったレベルから日本語学習を始めることができます。日本語専攻必修科目では、読む、書く、話す、聞くという4種類の重要な技能を重点的に磨いていきます。その他、作文や漢字、会話、また日本語能力試験の準備に特化したスキルコースを受講することが可能です。

しかし、学生が日本語を習得することだけが日本語学科の目的ではありません。「言語は手段・道具に過ぎません」と、日本語学科専攻アドバイザー兼日本語/アジア圏主要言語プログラムコーディネーターである准教授 長田涼子は語っています。「まさに料理と似ています。たくさん調理器具があっても、野菜や肉といった材料がなければ料理は完成しないのです」。だからこそ、長田は、学生が日本語スキルを鍛えるのと同時に、様々なテーマや分野を探求するように勧めています。

日本に関する地域研究の科目を受講することが学位取得の要件となっており、これらの選択科目を通し学生は日本文化と歴史について広範に学びます。日本の美術、歴史、宗教、地理、文学、ポップカルチャーなどのテーマから選択し、テーマを深く探求することが可能です。日本語と日本文化は互いに深く関係し合っています。そのため、日本語でのコミュニケーションを成立させるためには、歴史、伝統、社会通念といった背景知識が必要となります。これらの授業では、学生たちが日本の社会文化的な側面に親しむことで、日本語コミュニケーション能力を向上させることを目的としています。また、日本に関する知識を更に広く得たいと考えている学生のために、TUJでは修了証書や副専攻、そして同時専攻などといった選択肢も提供しています。

コミュニケーション能力を鍛える

TUJの日本語学科では、学生のコミュニケーション能力を鍛え、失敗を恐れず、日本語を話す機会を可能な限り多く持ってもらうことを狙いとしています。普段から日本語を用いるよう心掛けることは、文法を完璧にしたり、100パーセント正確な日本語を話せるようにしたりすることよりも重要なのです。「日常会話においては、助詞を間違えたり、飛ばしてしまったりしても、意味を推測することは難しくないのです」と長田は言います。一方で、学術的文章の作成に必要な正確性や、日本語能力試験のための準備などといった内容は、学生が日本語に慣れてきた頃に、より高度なクラスで教えられることになります。

学生に日本語漬けの生活を送ってもらうため、プロジェクトを実行したり、TUJのキャンパスの外に出て日本語でインタビューをするという課題も出されることもあります。このように、実践的な日本語を授業の外でも使う機会を設けることで、普段は友人とは使わない敬語の練習などもすることができるのです。また、准教授 山口麻子の担当する上級日本語会話のクラスでは、就職の決まった学生へのインタビューや、模擬面接、学生が興味を持っている日本企業のプロファイリングなどといった、就職活動に関連した活動を課題として行っています。「私はTUJを卒業した学生によい就職ができるようしっかりとサポートしたいのです」と山口は言っています。

准教授の齋藤純子は、日本に留まりたいと考えている学生たちに対し、どんな職種がいいのかを決め、それに最も役に立つ言葉の使い方を磨くようにアドバイスしています。例えば、伝統のある日本企業に勤めたいという学生の場合、漢字と敬語をしっかりと使えるようにならなければなりません。一方で、より国際的な企業を目指している学生の場合は、円滑な口頭でのコミュニケーション能力の方が優先されるといえるでしょう。

Photography by: Olga Garnova

本物の日本語に触れる

日本語の様々なニュアンスを学ぶには、日本文化に飛び込んで自ら実際に話をしてみることが何よりも重要です。日本語学科では、日本語のスキルを磨くだけでなく、同時に職業体験も得られるインターンシップを全ての学生に強く推奨しています。業界や職種は問いません。日本語を使える環境である限りどのような企業を選んでもいいと長田は学生に勧めています。ゲーム、自動車、出版、公共交通、運送会社、大使館など、日本語を使える業界は多岐に渡ります。インターンシップを通して学生は仕事に関係した日本語を覚え、日本の企業文化を学ぶことができます。日本国内でのキャリアでも、日本に関連した仕事をする国際的なキャリアでも、これら2つの要素は成功のための鍵となるものです。

就職部と提携して、日本語学科では、日本語を使って日本で働こうと計画している学生と新卒者を対象とした「日本語ブートキャンプ」プログラムを開発しました。2017年春学期と夏学期の合間に初めて実施された本講座は、敬語、志望理由、自己アピールなどを、3週間という短期集中で重点的に鍛えるものです。日本の企業での30分ほどの就職面接に耐えられる日本語能力を身につけることが第一の目的です。

大学の外の世界を知ろう!

日本語学科の教授陣はいずれも、学生にとって自分の社会的な活動範囲を広げ、大学の外でも日本語を使うことの重要性を説いています。多くの学生が「TUJ村」、すなわち「英語しか使わない場所」の中に閉じこもっていると山口は指摘しています。また、長田も、日本語をマスターするためにはクラスの中で日本語を使っているだけでは不十分だとして、山口と同様の意見を持っています。「とにかく話す相手を見つけて欲しいのです。ジムに行ったり、アルバイトをしたり、なんでもいい。とにかくTUJの外に出て、日本語を実際に使い、実社会の中で本物の日本語を聞くように」と長田は学生にアドバイスしています。学生がキャンパスの外に積極的に出れば、日本語のスキルを磨き、教室では教わることができない日本語を学ぶための機会がたくさんあります。とにかく日本語をたくさん使うことが必要なのです。

日本語学科では授業以外にも日本語を学んだり、日本語で人と繋がるためのチャンスを様々な形で提供しています。TUJ Work in Japanや TUJ Japanese Learner’s Networkといった誰でも参加できるFacebookのグループを運営しており、定期的にイベントを告知および開催、また就職関連情報の提供をしています。日本語スキルを向上させ、日本国内でのネットワークを広げていくための情報と機会を提供することが目的です。「よむよむクラブ」と「Talk&Talk」は学生に人気のあるイベントです。よむよむクラブはいわゆる読書クラブで、参加者は漫画を含む100冊以上の本を自由に読むことができます。Talk&Talkは日本文化について学んだり触れたりすることのできるイベントで、TUJの外で開催されることもあり、日本語を勉強したり、新たな出会いを得るための機会を求めている海外や日本の学生のためのものです。

日本語学科は、常に教室の外で学生が積極的に日本語学習に取り組んでくれるように努力しています。そうした試みの一環として、学内複数の部署と連携して開催を続けている「日本語サロン」では、学生、教職員がカフェテリアに集まり、ランチを取りながら日本語で話します。日本語の能力に関わらず、様々な学生たちが参加してくれるのを待っています。さあ、一緒にもっと練習しましょう!


執筆者: オリガ・ガルノヴァ(2017年卒業 コミュニケーション学科/アート学科同時専攻)