TUJウィルソン学長の話に聞き入る日本の大学の学長やリーダーたち。(東京大学伊藤国際学術研究センターにて)

2024年8月26日、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)のマシュー・ウィルソン学長が、東京大学大学院教育学研究科主催「学長セミナー」の特別セッションに登壇しました。このセミナーは、日本全国の現職および次期学長を対象としたもので、ウィルソン学長が、アメリカと日本、両国で培った豊富なリーダーシップ経験を共有し、提言する機会となりました。

ウィルソン学長のセッション「日本とアメリカの大学での学長の経験から」は、自身のオハイオ州やミズーリ州の公立大学での学長経験、そして現在のTUJでのリーダーシップを通じて得た、大学運営における財務、募金活動、学生エンゲージメントの重要性や運営手法を紹介し、特に日本とアメリカの高等教育システムの文化的な違いに焦点を当てた内容となりました。

募金活動の戦略

ウィルソン学長は、TUJの年次イベント「ダイヤモンドディナー」の成功を例に挙げ、効果的な募金活動の戦略について詳しく説明しました。「ゴルフトーナメントや、同窓会をクルーズで行うなど、募金集めのためのイベントを通年で行っているTUJでは、寄付者との意味のある関わりが大きな成果を生むことを実感しています。『ダイヤモンドディナー』は、重要な資金を集めるだけでなく、我々のミッションを支持してくれるコミュニティを築く場にもなっています」とウィルソン学長は述べました。

学生とのかかわり、独自のアプローチ

学生とのかかわりの重要性について述べ、独自のアプローチを詳しく紹介しました。「最初、学長と学生の座談会を計画しても、学生は誰も来ませんでした。リーダーシップはオフィスの中や公式の場だけで行うものではなく、学生の日常生活の中で存在することが重要です。自ら、バスケットボールや卓球大会、ボーリング大会で学生と一緒に対決することで、信頼とオープンな関係を築くことができます」と語りました。TUJ でも気軽に学生が相談できるよう学長室の扉を開放し、学生が困った時に直接連絡できるよう名刺に個人の携帯番号を記載しています。また、毎月「ゼロストレスデー」を設け、自らがほかの教職員とともにサンドイッチやピザを1000個以上学生に手渡しするなど、学生と教職員のコミュニティ意識を高めています。「これらの取り組みが、学生にとって、安心感を持ってもらうための環境作りに大いに役立っています。また学生からの提案があった場合、すぐに対応し、学生にとって一番よい形を作れるよう努めています」。

コミュニケーションの取り方

今の時代、とりわけSNSプラットフォームを活用して、学生や世界中の入学希望者に、彼らの目線で情報を発信することの重要性を強調しました。インスタグラムで自らが屋根の上からジャンプするような面白い加工動画を投稿し、「バズる」ことで注目を集め、話題を提供し、関心を高めた例を紹介。「デジタル時代において、私たちは学生が集まる場所、つまり彼らの使っている媒体を通じて学生と出会う必要があります。引き付けるコンテンツを作成することで、注目を集めるだけでなく、TUJのダイナミックで革新的な校風を発信することができます」と強調しました。

会場の好評なリアクション

本セミナーには、約35名の参加者が日本各地から集まりました。会の終盤の質疑応答では、特にアメリカの財務慣行や募金活動、財政困難と資金調達に関する質問が寄せられました。ある大学の学長は、「日米の違いはあるといえ、米国の大学における募金活動に関する事例は、実践的でもあります。興味深いです」とコメントしました。また別の学長は、早速TUJのインスタグラムを検索し、「なるほど。おもしろいですね!」と興味を示しました。

ウィルソン学長の講演は、グローバル教育推進に向けた彼自身の個人的なコミットメントを強調するだけでなく、TUJのグローバルな視点と日本社会への貢献の姿勢を明確に示す機会となりました。ウィルソン学長は、今後も日本の大学や地方自治体との潜在的な協力関係を探る意欲を示し、「日米での違いはあるにせよ、お互いに良いところを学びあい、互いに向上させることができると信じています」と締めくくりました。