2008年8月8日

テンプル大学ジャパンキャンパス(以下テンプルジャパン)の学生は、企業の支援をうけて国内外のNGOでの研修に参加し、貴重な学習体験を得ている。先ごろ報告会が行われた2つのNGO関連プログラムを紹介する。

インドのNGOにおける現地研修プログラム

テンプルジャパンでは、2000年から一般向けの公開講座として「NGOスキル開発」などのコースを提供してきたが、2003年よりフィリップ モリス ジャパンの助成を受けてこれらNGO関連のプログラムを大幅に拡充、2006年には大学学部課程にも「NGOと国際開発」コースが新設された。このコースではインドを例にした開発理論の比較原論を学び、開発のプロセスにおいてNGOが果たしている役割とその可能性について学習する。コースの一環として、学生は南インドのNGO、M.S.スワミナタン研究基金(MSSRF)(www.mssrf.org)の活動地域を訪れ、最先端のIT技術を地域の貧困削減、継続可能な開発、環境保護などの課題解決に役立てる術を学ぶ。

今年3回目を迎えたインド研修は、4月24日から5月6日までの約2週間行われ、国際関係学などを専攻する15名が参加した。学生は8つの村で活動するグループを訪問。マイクロクレジット(少規模融資)でビジネスを立ち上げ、自らの手で貧困を克服した村民たちの生の声を聞いたり、実際の環境保護活動に参加するなどした。

去る7月16日には、都内の世界銀行情報センターを借りて学生による報告会が行われ、一般聴衆を前にテンプルの学生が研修成果を発表した。

学生の報告より

  • 三代 由里恵さん(日本/国際関係学専攻)
    ある村を訪問したときのこと。一人の農夫が、NGOが支給してくれた種を撒いて収穫が増えたという。調べてみると、環境に配慮していない品種を使えばもっと収穫量が増えるということがわかった。どんな場合でも環境を重視するMSSRFの姿勢に感動したと同時に、先進国が引き起こした環境問題なのに、開発途上国の最貧層もこのような形で影響を受けることに、疑問を禁じえなかった。
  • シュウ・シンランさん(中国/国際関係学専攻)
    インドを訪れて貧富の格差に愕然とした。でも格差自体は悪だと思わない。経済発展の第一歩だからだ。また、そのような環境で人々を貧困から救い出すためにNGOが果たす役割は大きい。インドの経済は発展途上かもしれないが、NGOの経験と生産性に関しては、インドは最先進国のひとつだと思う。こうした面で、中国はインドに学ぶものがあるのではないか。
  • アレクサンドラ・ルゼツカさん(ブルガリア/国際関係学専攻)
    ある最貧の村で農村知識普及プロジェクトの学習センターを訪問した。そこで読み書きを習得した農民たちの話を聞きながらメモをとっていたら、子供たちが話しかけてきた。言葉はわからなかったが、どうも私のペンとノートに興味があるらしい。後で通訳してもらうと、子供たちは自分の名前が書けることを私に見せたかったのだ。あの子供たちの熱心な瞳は忘れられない。与えられたものに感謝し、他と分かち合うことの大切さを学んだ。

国際NGOにおける長期インターン研修

テンプルジャパンは、シティの支援により、年間18名の学生を7つのNGOにインターン研修生として派遣する「シティ・コミュニティ・インターンシップ・プログラム(CIP)」を運営している。CIPとは、NGO活動を学ぶことに意欲がある大学生を対象に、シティが世界で取り組んでいる実践型インターンシップ・プログラム。NGOに対しては、プログラム費用の支払いおよび学生という人材派遣を通して支援を行い、学生に対してはインターンシップ代を支給してNGOの役割や社会について積極的に学べる機会を提供しているもので、日本ではテンプルジャパンがパートナーに選ばれ2007年よりスタートした。

NGOにとって、バイリンガルなテンプルジャパンの学生インターンは強力なマンパワーとなり、間接的なコスト削減にもつながる一方、国際機関で働く希望を持つ学生が多いテンプルジャパンにとっても、CIPにより派遣先NGOの選択肢が増え、研修機会を充実させることが可能となった。(テンプルジャパンでのインターンシップは1学期間(約3ヶ月)を通して派遣され、週に10~15時間就業。CIP以外も含めて年間約90名がインターンシップを経験する。)

去る7月15日には、2008年春学期(1~4月)に研修を終えた9名の学生のうち3名と、それぞれの受入れ先NGO*の代表者を招いて、日興シティホールディングス株式会社にて報告座談会が行われた。

学生の報告より

  • 小坂碧さん(教養学専攻/北海道出身)
    子供地球基金にて、小児病棟で子供達が絵を描くお手伝いや20周年イベントの準備のアシストをした。
    罪のない子供達がさまざまな理由で犠牲になっている現実に自分自身も何かできないかと思っていたので、基金でのインターンを希望した。世界100カ国で活動し20周年を迎える組織の事務所に、たった4つしか机がなかったことが最初の驚き。人数とは関係なく、関わっている方達のパワーや熱意がダイナミックな活動を可能にしていることが分かった。
  • 嶋野顕太郎さん(経済学・政治学専攻/福井県出身)
    国連WFP協会にて、日本の寄付者向けに募金の「使途レポート」を作成するため、数百ページにわたる英文活動報告書の要約・和訳およびレイアウトを担当。
    カナダのインターナショナルスクールに在学中、たくさんの国籍の生徒が偏見や差別もなく共に学んでいた。そんな環境の中で自然に国連のようなグローバルな組織で仕事がしたいという希望が生まれた。今回研修してみて、初めて組織の役割や実態を理解できた。
  • 岡本涼子さん(国際関係学専攻/千葉県出身)
    日本フィランソロピー協会にて、160社以上のCSR報告書をデータベース化するプロジェクトを一人で担当。
    当初は、社会人になる前にNGOの仕事を経験をしておこう、というくらいの漠然とした動機だった。データベース化の作業や企業のCSR担当者の話を聞くうち、企業は本業を活かしながら、そして個人もどんな職種であれ、CSRを行うことができるという大きな発見をした。自分も今後より積極的に行動していきたいと思うようになった。