写真:イベントの模様

言語教育は、どんな国でも多くの論争を招く分野で、さまざまな感情の起伏やアイデンティティの衝突を生じさせます。堀口佐知子、井本由紀氏、グレゴリー・プール氏らによる編著『日本における外国語教育:質的アプローチの探求(Foreign Language Education in Japan: Qualitative Approaches)』の発売に合わせて行われたブックトークでも、活発な議論が繰り広げられました。このイベントは、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)現代アジア研究所(ICAS) が主催し2月1日にTUJ三田校舎で行われました。

最初のパネルディスカッションでは、グレゴリー・プール氏(同志社大学教授)が進行役を務め、ティーナ・マティカネン氏(国際基督教大学講師)、松岡里枝子氏(国立看護大学校教授) 、パトリック・ローゼンキャー(TUJ教授) と議論を行いました。各研究者は、それぞれデータ収集の中で見出した課題や問題などについて語りました。

写真:パネルディスカッションの模様
(左から)堀口佐知子(TUJ)、片山晶子氏(東京大)、グレゴリー・プール氏(同志社大)、井本由紀氏(慶応大)※所属は開催当時

次のセッションでは井本由紀氏(慶応大学専任講師)が進行役を務め、パネリストの片山晶子氏(東京大学特任講師)、プール氏、堀口佐知子(TUJ准教授)が教室や組織に焦点を当てたアプローチを紹介しました。プール氏と堀口は、共同研究における研究者間の緊張関係や、共同で行うエスノグラフィーの魅力について話しました。また、片山氏は、大学の授業での生徒の発音に関する質的研究の戦略と成果を披露しました。

質疑応答では、参加者から洞察に満ちた多くの質問や問題提起が出されました。プール氏は日本で「グローバル」について論じられる際の英語の排他性を指摘しました。それに応えて、ある参加者はフランス語やその他の言語が、もはや主要な使用言語としての力を失っていることを指摘しました。英語の支配的地位について議論が続き、参加者とパネリスト間で幅広い意見が交わされました。

この書籍のプロジェクトは、2009年に井本氏と堀口の企画によりTUJで開かれた『Anthropology of Japan in Japan』年次総会のパネルディスカッション『日本の教育機関の変化と継続性:外国語教育と多文化主義(Changes and Continuities in Japanese Educational Institutions: Foreign Language Education and the Discourses of Multi-Culturalism)』をきっかけとして始まりました。今回パネリストとして登壇した片山氏、マティカイネン氏、松岡氏はTUJで博士号を取得しており、同窓である3名にとっては書籍の発売記念イベントにとどまらない特別な会となりました。

写真:パネルディスカッションの模様
(左から): パトリック・ローゼンキャー(TUJ)、松岡 里枝子氏(国立看護大学校)、ティーナ・マティカイネン氏 (ICU)、グレゴリー・プール氏(同志社大)※所属は開催当時

パネリスト:

※所属は開催当時

  • パトリック・ローゼンキャー(テンプル大学ジャパンキャンパス 英語学教授)
  • グレゴリー・プール氏(同志社大学 社会人類学教授/国際教育インスティテュート所長)
  • 松岡 里枝子氏(国立看護大学校 教授)
  • ティーナ・マティカイネン氏(国際基督教大学 教養学部 リベラルアーツ英語プログラム 特任講師)
  • 堀口 佐知子 (テンプル大学ジャパンキャンパス 人類学准教授)
  • 片山 晶子氏(東京大学 教養学部 グローバルコミュニケーション研究センター特任講師)
  • 井本 由紀氏(慶應義塾大学 理工学部 外国語・総合教育教室 専任講師)

テンプル大学ジャパンキャンパス現代アジア研究所について

テンプル大学ジャパンキャンパス内にある現代アジア研究所(ICAS)は、外交、政治・政策、安全保障、文化など様々な分野の専門家を招待し、一般向けに無料の講演やセミナーを年間35回程度開催しています。参加者はジャーナリスト、学術関係者、各国政府関係者、学生、ビジネスマンなど多岐に亘り、国籍も様々です。また政策、学術研究などの成果を発信する傍ら、夏学期には各国の大学生のインターンを受け入れるなど、日本・アジア研究の知の拠点として活動しています。

イベント情報: http://www.tuj.ac.jp/icas/events/