シンポジウムの受付に掲げられたテンプル ロースクールのバナー
テンプル大学ジャパンキャンパス(東京都世田谷区/学長マシュー・ウィルソン、以下TUJ)のロースクールは、2023年11月9日・10日の2日間にわたり、日米司法制度の比較分析をテーマとしたシンポジウムを東京で開催しました。カリフォルニア州裁判所判事と日本の法曹関係者が登壇し、裁判にあたって裁判官や弁護士らが直面する近年の課題についてオープンで洞察に満ちた対話を展開しました。当日は、TUJの教員・ロースクール在学生のみならず、国内外の司法関係者や日本の法科大学院の教授など多様な聴衆が参加し、刑事司法、司法改革と倫理、裁判員裁判などの議論に耳を傾けました。
主な登壇者は以下の通りです。
- TUJロースクールディレクター・上級准教授 ティナ・サンデス氏
- UC Law San Francisco 上級客員教授 Center for East Asian Legal Studiesシニアディレクター 宮澤節生氏
- 白鴎大学法学部教授 平山真理氏
- 東京大学名誉教授 ダニエル・フット氏
- 一橋大学大学院法学研究科教授(グローバルビジネスロー)レオン・ウルフ氏
- カリフォルニア州最高裁判所判事(退官)・元駐ベリーズ米国大使 カルロス・モレノ氏
- カリフォルニア州裁判所判事 ロベルタ・ハヤシ氏
- カリフォルニア州裁判所判事 ジョン・タカスギ氏
これらの登壇者に加えて、日本の最高裁判所事務総局の裁判官なども講演しました。
初日の11月9日は、TUJに隣接する昭和女子大学で3つのパネルディスカッションが行われました。
- セッション1「日米の刑事司法制度(The Criminal Justice System in Japan and the U.S.)」では、「人質司法」の問題や保釈を含む公判前釈放の考え方を取り上げ、日本の刑事司法制度について米国と比較しながら掘り下げました。
- セッション2「日米の司法改革と法曹倫理(Judicial Reform and Legal Ethics in Japan and the U.S.)」では、両国の裁判官の倫理基準とその実践、日本における司法研修の影響をテーマに取り上げました。最近は、米国最高裁の調査やカリフォルニア州弁護士会の意見書に見られるように、裁判官のソーシャルメディアの利用や弁護士の不正行為報告など司法倫理の重要性を強調する出来事が起きています。
- セッション3「日米の陪審裁判制度、その管理における判事の役割(The Jury Trial Systems in Japan and the U.S. and the Judge’s Role in Managing Them)」では、日本の裁判員制度と米国の陪審員制度を比較し、正義の実現において両者が果たす役割や、陪審員の選出プロセス、陪審員裁判において裁判官が直面する課題について話し合われました。
翌日のシンポジウムは会場をTUJに移し、現地またはオンラインで参加できるハイブリッド・スタイルで開催されました。「忘れるな――コレマツ対アメリカ合衆国裁判と日系アメリカ人強制収容(Never Forget: Korematsu v. United States and the Incarnation of Japanese Americans)」と題したカリフォルニア州のロベルタ・ハヤシ判事とジョン・タカスギ判事によるセッションでは、戦時中に日系アメリカ人12万人の強制収容を支持した米連邦最高裁の判決を振り返りました。エミー賞を受賞したドキュメンタリー「Of Civil Rights and Wrongs:The Fred Korematsu Story」も上映され、人種や国籍、宗教に基づく政策決定という文脈でコレマツ裁判の歴史的・現代的意義について議論しました。
■テンプル大学ロースクールについて
米国法曹協会の認定を受けテンプル大学ロースクールは、1895年の創設以来、国際法曹教育のパイオニアとして、アクセシビリティと多様性を重視し、プロとしての責任と地域社会への貢献に重点を置いた教育を提供してきました。ランキングでは特に法廷弁論、パートタイム・プログラム、国際法の評価が高く、USニューズ&ワールド・レポート2023-2024年版では、法廷弁論プログラムが全米ロースクール中第2位となっています。
この質の高いテンプル大学ロースクールのプログラムは現在、米国フィラデルフィア本校のほか、日本校(TUJ)およびローマ校で提供されています。TUJでは1994年にロースクールがスタートし、学生は日本にいながら法学修士号(LLM)や修了証書を取得できます。本校同様、TUJのロースクールも米国法曹協会に認定されており、卒業生は米国司法試験の受験資格を得ることができます。なお、TUJは日本で最大規模かつ最も長い歴史を持つ外国大学の日本校であり、2005年に文部科学省から「外国大学の日本校」として初めて指定されています。
関連ニュース
- 米国商務副長官、内閣広報官、TUJにて講演、学生にとって貴重な学びの機会に(2023年10月12日)
- 米国テンプル大学ロースクール長が来日。女性の健康の公平性についてTUJで講演の後、企業訪問も(2023年6月15日)
- アステラス製薬の岡村直樹氏がTUJ国際ビジネス学科にて企業金融について講義(2023年5月30日)